奈良県は歴史上、都が置かれ多くの寺院が建立されており、仏教の信仰心が深い地域でした。お葬式の風習に関しても、古くからのしきたりを今も残していることや、周辺都市に合わせた形式に変化している地域など多様化しています。
一般的には後火葬が多く、通夜の翌日に葬儀と告別式を行い、出棺、火葬という流れです。納骨については、四十九日に行われますが、一部地域では分骨して百日目にも納骨する風習もあります。そして、土葬が今現在も行われている地域があります。
葬式や通夜の進行は、垣内と呼ばれる近隣10軒程度で構成された組織が、故人への感謝と遺族の様々な負担を軽減するため参列者の接待や受付を行います。近年は葬儀社が行う場合も多くなっており、垣内の負担も減っているようではあります。
土葬の風習の名残で、位牌は二つ用意されます。一つは、内位牌という一般的な白木の位牌で葬式時に使用します。もう一つは、野位牌という土葬の際にお墓に置いておくものもので、土葬が少なくなった今でも用意されてことが多いようです。
故人がこの世への未練を断ち成仏できるよう、茶碗割りという、故人が愛用していた食器を遺族が割る儀式と、門火という門前でわらを燃やして霊を送り出すものがあります。
長く生きれば生きるほど、親しく付き合ってきた友人やご近所さんとの別れに出会う確率も高くなります。また、認知症を患って施設に入っていたり、病気で長い間伏せっていたという人なら、いつしか友人との交流も疎遠になっているでしょう。
その結果、寿命が尽きてお葬式ということになれば、家族としては長らく会っていない人にあえて連絡を取る必要もないという考えになるかもしれません。そこで生まれた葬儀の新しいスタイルが、お通夜も告別式も行わないお葬式です。
亡くなってから24時間が経過すれば火葬が行えますので、火葬場へ遺体を運び、そこでお弔いをしながらお骨にするという方法を選ぶ人が、奈良県でも増えてきました。この新しい葬儀方法が生まれた背景に、長生きする人が増えたという日本の高齢化があるのは確実です。
故人にとっても最期まで世話をしてくれた家族に送られたなら、それが何よりなのかもしれません。